独奏チェロとピアノのための単楽章ソナタです。随分前に友人の依頼で書いたものになります。そのときはさらにもうふたつ楽章を追加して3楽章形式にしようと考えていたのですが、書きかけた第2楽章がイマイチだった上、その後も良い楽想を思いつかなかったので、その計画はすっぱり諦めて、単楽章形式として公開することにしました。
冒頭はピアノのトレモロの上に、暗い情熱のこもったト短調の第1主題をチェロが演奏して始まります。ひとしきり確保を行った後、ピアノが哀愁を帯びた第2主題をニ短調で提示します。チェロがこれを優しく確保すると、第1主題が戻ってきます。
ピアノが最低音のAを力強く叩くと展開部に突入し、まずは第1主題を中心に展開されます。調性を次々に変えながら盛り上がると、急激に静かな音楽となり、今度は第2主題が中心となります。再び第1主題が変イ長調の明るい雰囲気で戻ってくると、チェロがアルペジョ風のパッセージを奏し、二音で終止します。チェロのカデンツァを挟むと再現部に入ります。
第1主題はまずはピアノのみで、原調のト短調で再現されます。途中からはチェロも加わり、ピチカートによるオブリガートで彩りを添えます。提示部とは違う、畳み掛けるような推移を経て、第2主題がト短調で、チェロとピアノの二重唱によって再現されます。最後に第1主題をもう一度、力強く演奏し、クライマックスを形成すると、チェロが半音階を駆け上がり、叩き切るようにト音のピチカートを打ち込んで曲を終えます。